今回は海の中の幻想的な世界が楽しめる、浦島太郎の読み聞かせ音声(無料)の紹介です。
やや長めのストーリーですが、創造力をかきたてる内容でお子さんも興味を持ってきいてくれると思います。
絵本に慣れ始めたお子様のステップアップに最適なコンテンツでもありますよ。
子育てママにとって赤ちゃんのお世話と家事の両立は本当に大変ですよね?
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読み聞かせ音声は、聞くだけで赤ちゃん・幼児の創造力や言語力が向上するなど、知育効果も期待できます。
すべての読み聞かせは無料なので、是非活用してください。
浦島太郎:読み聞かせ動画・音声
若宮いろはが心を込めて朗読しました。我が子の成長を願う愛情たっぷりの読み聞かせ音声を、是非あなたの子育てにもご利用くださいw
物語 <ストーリー>
第一幕
むかし、むかし、丹後の国水の江の浦に、浦島太郎というりょうしがいました。
浦島太郎は、海へ出かけて、たいや、かつおなどのお魚をつって、おとうさんおかあさんを養っていました。
ある日、浦島はいつものとおり海へ出て、一日おさかなをつって、帰ってきました。途中、子どもが五、六人道端にあつまって、がやがや言っていました。
何かとおもって浦島がのぞいてみると、小さいかめの子を一ぴきつかまえて、棒でつついたり、石でたたいたり、さんざんにいじめているのです。
浦島は見かねて、
「まあ、そんなかわいそうなことをするものではない。いい子だから」
と、とめましたが、子どもたちはきき入れようともしないで、
「なんだい。なんだい、かまうもんかい」
といいながら、またかめの子を、あおむけにひっくりかえして、足でけったり、砂のなかにうずめたりしました。浦島はますますかわいそうにおもって、
「じゃあ、おじさんがお金をあげるから、そのかめの子を売っておくれ」
といいますと、こどもたちは、
「うんうん、お金をくれるならやってもいい」
といって、手を出しました。そこで浦島はお金をやってかめの子をもらいうけました。
子どもたちは、
「おじさん、ありがとう。また買っておくれよ」
と、わいわいいいながら、行ってしまいました。
そのあとで浦島は、こうらからそっと出したかめの首をやさしくなでてやって、
「やれやれ、あぶないところだった。さあもうお帰りお帰り」
といって、わざわざ、かめを海ばたまで持って行ってはなしてやりました。かめはぶくぶくあわをたてながら、水のなかにふかくしずんで行ってしまいました。
それから二、三日たって、浦島はまた舟にのって海へつりに出かけました。遠い沖のほうまでもこぎ出して、一生けんめいおさかなをつっていますと、
「浦島さん、浦島さん」
とよぶ声がしました。おやと思って振り返ってみますと、だれも人のかげは見えません。その代り、いつのまにか、一ぴきのかめが、舟のそばにきていました。
浦島がふしぎそうな顔をしていると、
「わたくしは、先日助けていただいたかめでございます。きょうはちょっとそのお礼にまいりました」
かめがこういったので、浦島はびっくりしました。
「まあ、そうかい。わざわざ礼なんぞいいにくるにはおよばないのに」
「でも、ほんとうにありがとうございました。ときに、浦島さん、あなたはりゅう宮をご
らんになったことがありますか」
「いや、話にはきいているが、まだ見たことはないよ」
「ではほんのお礼のしるしに、わたくしがりゅう宮を見せて上げたいとおもいますがいかがでしょう」
「へえ、それはおもしろいね。ぜひ行ってみたいが、それはなんでも海の底にあるということではないか。どうやって行くつもりだね。わたしにはとてもそこまでおよいでは行けないよ」
「なに、わけはございません。わたくしの背中におのりください」
かめはこういって、背中を出しました。浦島は半分きみわるくおもいながら、いわれるままに、かめの背中にのりました。
かめはすぐに白い波を切って、ずんずんおよいで行きました。ざあざあいう波の音がだんだん遠くなって、青い青い水の底へ、ただもう夢のようにはこばれて行きますと、ふと、そこらがかっとあかるくなりました。
白玉のようにきれいな砂の道がつづいて、むこうにりっぱな門が見えました。その奥にきらきら光って、目のくらむような金銀の建物が、たかくそびえていました。
「さあ、りゅう宮へまいりました」
かめはこういって、浦島を背中からおろして、
「しばらくお待ちください」
といったまま、門のなかへはいって行きました。
第二幕
まもなく、かめはまた出てきて、
「さあ、こちらへ」
と、浦島を御殿のなかへ案内しました。いろいろなおさかなが、ものめずらしそうな目で見ているなかを通ってはいって行くと、乙姫さまがおおぜいの侍女をつれてお迎えに出てきました。
やがて乙姫さまについて、浦島はずんずん奥へとおって行きました。めのうの天井にさんごの柱、廊下には、るりがしきつめてありました。
こわごわその上をあるいて行きますと、どこからともなくいいにおいがして、たのしい楽の音がきこえてきました。
やがて、水晶の壁に、いろいろの宝石をちりばめた大広間にとおりますと、
「浦島さん、ようこそおいでくださいました。先日はかめのいのちをお助けくださいまして、まことにありがとうございます。なんにもおもてなしはございませんが、どうぞゆっくりおあそびくださいまし」
と、乙姫さまはいって、ていねいにおじぎしました。やがて、大小いろいろなおさかなが、めずらしいごちそうを山とはこんできて、にぎやかなお酒盛がはじまりました。
きれいな侍女たちは、歌をうたったり踊りにおどったりしました。浦島はただもう夢のなかで夢を見ているようでした。
ごちそうがすむと、浦島はまた乙姫さまの案内で、御殿のなかをのこらず見せてもらいました。どのおへやも、どのおへやも、めずらしい宝石でかざり立ててありますからそのうつくしさは、とても口やことばではいえないくらいでした。
ひととおり見てしまうと、乙姫さまは、
「こんどは四季のけしきをお目にかけましょう」
といって、まず、東の戸をおあけになりました。そこは春のけしきで、いちめん、ぼうっとかすんだなかに、さくらの花が、うつくしい絵のように咲き乱れていました。
青青としたやなぎの枝が風になびいて、そのなかで小鳥が鳴いたり、ちょうちょうが舞ったりしていました。
次に、南の戸をおあけになりました。そこは夏のけしきで、垣根には白いうの花が咲いて、お庭の木の青葉のなかには、せみやひぐらしが鳴いていました。
お池には赤と白のはすの花が咲いて、その葉の上には、水晶の珠のように露がたまっていました。お池のふちには、きれいなさざ波が立って、おしどりや鴨がうかんでいました。
次に西の戸をおあけになりました。そこは秋のけしきで花壇のなかには、黄ぎく、白ぎくが咲き乱れて、いいかおりを立てました。
むこうを見ると、かっともえ立つようなもみじの林の奥に、白い霧がたちこめていて、鹿の鳴く声がかなしくきこえました。
いちばんおしまいに、北の戸をおあけになりました。そこは冬のけしきで、野には散りのこった枯葉の上に、霜がきらきら光っていました。
山から谷にかけて、雪がまっ白に降り埋んだなかから、柴をたくけむりがほそぼそとあがっていました。
浦島は何を見ても、おどろきあきれて、目ばかり見はっていました。そのうちだんだんぼうっとしてきて、お酒に酔った人のようになって、何もかもわすれてしまいました。
第三幕
毎日おもしろい、めずらしいことが続いて、あまりりゅう宮がたのしいので、うかうかあそんでくらすうち三年の月日がたちました。
三年めの春になったとき、浦島はときどき、ひさしくわすれていたふるさとの夢を見るようになりました。
春の日のぽかぽかあたっている水の江の浜べで、りょうしたちが元気よく舟歌をうたいながら、網をひいたり舟をこいだりしているところを、まざまざと夢で見るようになりました。浦島はいまさらのように、
「おとうさんや、おかあさんは、いまごろどうしておいでになるだろう」
と、こうおもい出すと、もう、いても立ってもいられなくなるような気がしました。なんでも早くうちへ帰りたいとばかりおもうようになりました。
ですから、もうこのごろでは、歌をきいても、踊りを見ても、おもしろくない顔をして、ふさぎこんでばかりいました。
その様子を見ると、乙姫さまは心配して、
「浦島さん、ご気分でもおわるいのですか」
とおききになりました。浦島はもじもじしながら、
「いいえ、そうではありません。じつはうちへ帰りたくなったものですから」
といいますと、乙姫さまはきゅうに、たいそうがっかりした様子をなさいました。
「まあ、それは残念です。でもあなたのお顔を拝見いたしますと、おひきとめしても、無駄のようにおもわれます。ではいたし方ございません、行っていらっしゃいませ」
こう悲しそうにいって、乙姫さまは、奥からきれいな宝石でかざった箱を持っておいでになって、
「これは玉手箱といって、なかには、人間のいちばんだいじなたからがこめてございま
す。これをおわかれのしるしにさし上げますから、お持ちかえりください。
ですが、あなたがもういちどりゅう宮へ帰ってきたいとおぼしめすなら、どんなことがあっても、けっしてこの箱をあけてごらんになってはいけません」
と、くれぐれもねんをおして、玉手箱をおわたしになりました。浦島は、
「ええ、ええ、けっしてあけません」
といって、玉手箱をこわきにかかえたまま、りゅう宮の門を出ますと、乙姫さまは、またおおぜいの侍女をつれて、門のそとまでお見送りになりました。
もうそこには、例のかめが来て待っていました。浦島はうれしいのとかなしいのとで、胸がいっぱいになっていました。
そしてかめの背中にのりますと、かめはすぐ波を切って上がって行って、まもなくもとの浜べにつきました。
「では浦島さん、ごきげんよろしゅう」
と、かめはいって、また水のなかにもぐって行きました。浦島はしばらく、かめの行くえを見送っていました。
第四幕
浦島は海ばたに立ったまま、しばらくそこらを見まわしました。春の日がぽかぽかしていちめんにかすんだ海の上に、どこからともなく、にぎやかな舟うたがきこえました。
それは夢のなかで見たふるさとの浜辺の景色とちっともちがったところはありませんでした。けれどよく見ると、あう人もあう人も、いっこうに見知らない顔ばかりです。
「おかしなこともあるものだ。たった三年のあいだに、みんなどこかへ行ってしまうはずはない。まあ、なんでも早くうちへ行ってみよう」
こうひとりごとをいいながら、浦島はじぶんの家の方角へあるき出しました。
ところが、そことおもうあたりには草やあしがぼうぼうとしげっていて、家は影もかたちもありません。むかし家の立っていたらしい後さえものこってはいませんでした。
いったい、おとうさんやおかあさんはどうなったのでしょうか。浦島は、
「ふしぎだ。ふしぎだ」
とくり返しながら、きつねにつままれたような、きょとんとした顔をしていました。
するとそこへ、よぼよぼのおばあさんがひとり、つえにすがってやってきました。浦島はさっそく、
「もしもし、おばあさん、浦島太郎のうちはどこでしょう」
と、声をかけますと、おばあさんはけげんそうに、しょぼしょぼした目で、浦島の顔をながめながら、
「へえ、浦島太郎。そんな人はきいたことがありませんよ」
といいました。浦島はやっきとなって、
「そんなはずはありません。たしかにこのへんに住んでいたのです」
といいました。そういわれて、おばあさんは、「はてね」と、首をかしげながら考えこんでいましたが、やがてぽんとひざをたたいて、
「ああ、そうそう、浦島太郎さんというと、あれはもう三百年も前の人ですよ。昔、浦島太郎という人がいて、ある日つりに出たまま帰ってこなくなりました。
たぶんりゅう宮へでも行ったのだろうということです。なにしろ大昔の話だからね」
こういって、また腰をかがめて、よぼよぼあるいて行ってしまいました。
浦島はびっくりしてしまいました。
「はて、三百年、おかしなこともあるものだ。たった三年りゅう宮にいたつもりなのに、それが三百年とは。するとりゅう宮の三年は、人間の三百年にあたるのかしらん。それでは家もなくなるはずだし、おとうさんやおかあさんがいらっしゃらないのもふしぎはない」
こうおもうと、浦島はきゅうにかなしくなって、さびしくなって、目の前が暗くなりました。いまさらりゅう宮がこいしくてたまらなくなりました。
しおしおとまた浜べへ出てみましたが、海の水はまんまんとたたえていて、どこがはてともしれません。もうかめも出てきませんから、りゅう宮へ行く方法もありませんでした。
そのとき、浦島はふと、かかえていた玉手箱に気がつきました。
「そうだ。この箱をあけてみたらば、わかるかもしれない」
こうおもうとうれしくなって、浦島は、うっかり乙姫さまにいわれたことはわすれて、箱のふたをとりました。
するとむらさき色の雲が、なかからむくむく立ちのぼって、それが顔にかかったかとおもうと、すうっと消えて行って箱のなかにはなんにものこっていませんでした。
その代り、いつのまにか顔じゅうしわになって、手も足もちぢかまって、きれいなみぎわの水にうつった影を見ると、髪もひげも、まっしろな、かわいいおじいさんになっていました。
浦島はからになった箱のなかをのぞいて、
「なるほど、乙姫さまが、人間のいちばんだいじなたからを入れておくとおっしゃったあれは、人間の寿命だったのだな」
と、ざんねんそうにつぶやきました。
春の海はどこまでも遠くかすんでいました。どこからかいい声で舟うたをうたうのが、またきこえてきました。浦島は、ぼんやりとむかしのことをおもい出していました。
おしまい。